歌曲とイタリアオペラアリアバス・バリトンアンソロジー CD販売価格:3,000円(税込)
椋尾凱郎氏の声楽家としての特長は、何を措いてもまずは低音の魅力にあるといえるのではないだろうか。日本人のなかには、いや世界的にみても男声の低音を危なげなくたっぷりと楽しませてくれる歌手はさほど多くはないなかで、椋尾氏は数少ないバス-バリトンの豊かな声量を持つ一人として歩んできた。椋尾氏は武蔵野音楽大学在学中から声の素質が注目されていたといわれ、卒業後すぐに各地で演奏活動を展開したが、より本格的なステージで歌唱を燃焼させるようになったのは、イタリア留学から帰国した後の1980年代からではないか。その後はリサイタルをたびたび開催しており、コンサートにも数多く出演。貴重な人材であるにもかかわらずオペラへの出演が少ないのは、おそらくはその間の日本のオペラ・声楽界固有の事情ゆえのことかもしれない。 【音楽評論家、関根礼子氏「CDライナーノート」より】
声量に恵まれ満身を込めての熱唱に好感をいだく。暗い情念の渦巻きや、押さえきれない激情を波打たせる歌いまわしなど最も優れた適正が感じられた。 【音楽之友社『音楽芸術』誌より】
荘子は「神の声<心斎>を聴くときは耳をもってではなく、心をもってせよ、心をもってではなく、息をもってせよ」(人間世)と述べた。私は彼の声に耳を傾けながら、プシュケーの発する声の「根源的形象世界」munudus imaginalisというものを思いを致すのである。 【(元)名古屋大学教授・桂芳樹氏「CDライナーノート」より】 |